「中途採用のエンジニアに対して、特に教育や研修は行なっていない」

「現場や上層部に、中途採用のエンジニアを教育する意義が理解されない」

「せっかく中途採用でエンジニアを獲得しても、早期離職が続き困っている」

企業では中途採用は即戦力採用であるという認識が強いため、中途採用のエンジニアに対して特に教育研修を行なっていない場合があります。特に、人手に余裕のない企業の場合、すぐに現場に配属して実務を任せてしまい、人間関係の構築やマネジメントがうまく行かず、早期離職してしまうケースがあります。

そこで、今回の記事では中途採用のエンジニアに対する教育・研修の必要性や種類、研修期間や費用についてご紹介していきます。

中途採用のエンジニアに教育・研修は必要か

中途採用の社員は新入社員と違い、入社時に教育・研修をする必要がないという認識をされている場合があります。しかし、エンジニアとしてのスキルを持っていても、社内環境に適応できるかどうかはまた別の問題です。この章では、中途採用のエンジニアへの導入研修の必要性についてご紹介していきます。

導入研修とは?

導入研修は中途採用の社員が入社したタイミングで実施する研修です。エンジニアとして入社した場合、業務を遂行するために必要なスキルは持っていますが、それ以外の業務スキル以外については新入社員とあまり変わらないと考えた方が良いでしょう。

例えば、入社した企業の経営理念やビジネス上の立ち位置、今後の企業戦略といった経営方針から、日々の業務はどうやって進めるかという働き方や社内独自のルールなどは研修を実施しないと理解できない点が数多くあります。

また、エンジニアもチームで働く必要があるため、既存社員との人間関係の構築を組織としてサポートし、1日も早く職場に適応してもらう必要があります。

社内の働き方を理解し、社員と人間関係を構築するためにも導入研修を実施し、スムーズに職場で働くことができるようになることが研修の目的です。

中途採用のエンジニアを教育する必要性

「中途社員は即戦力」といわれることがありますが、即戦力でも働き方が理解できなければ力を発揮することはできません。報告・連絡・相談の方法一つとっても、企業が変われば全く方法が変わるため、社内独自の仕事の進め方やルールを教えておかないと、仕事の効率は上がらないため、研修において仕事の進め方を理解してもらう必要があります。

また、社内ルールや企業文化を理解しておかないと、既存社員とコミュニケーションを取る上でトラブルに発展する可能性があります。こういったリスクを未然に防ぐことも重要です。

そして、中途採用の社員が職場に適応し、円滑な人間関係の構築と早期の戦力化を達成するためには、ただ現場に配属するだけではいけません。

マネジメントの観点からも、職場への適応や早期の戦力化は採用された本人の力量に左右されるのではなく、適切なマネジメントによって、誰もがスムーズに職場に順応し、戦力化できるようなスキームを企業として構築しておく必要があるからです。

中途採用のエンジニア向け導入研修の種類

中途採用で入社した社員に対して実施する導入研修には、どんな種類があるのでしょうか。この章でご紹介していきます。

派遣講師による個別研修

個別研修は、企業理念や働き方、社内独自のルールなど、中途採用の社員が働く上でのベースを学ぶ研修です。また、内容によっては同じ部署の上司やメンバーを一緒に参加させることで共に働く仲間がどんな人物かを把握でき、研修後は安心して働くことができます。

また、派遣講師によって入社先での自分のミッションや、これからの働き方について考える機会を設けることも重要です。特に、転職によってキャリアの方向性が変わったタイミングなので、これを機に自分がどうキャリアを築いていきたいのかを考えることは、早期離職の防止や職場で早期に戦力化するためにも有効です。

外部研修

研修会社が実施している外部研修に派遣することも中途採用の場合には多く見受けられます。特に中途採用は入社時期がバラバラで研修対象が1人の場合が多いことから、コストパフォーマンスや研修効果を考えて外部に依頼することが多くあります。

ただし、外部研修は特定の知識やスキルを身につけるためには効果的ですが、企業独自の働き方や社内ルールを身につけることができないため、別途で働き方などに関する研修や指導を行う必要があります。

オンボーディング

オンボーディングとは、中途採用の社員が早期に職場に慣れ、活躍できるように職場全体で環境づくりを行う取り組みです。中途採用の社員だけでなく、既存社員も含めて取り組むことから、組織の生産性向上にも繋がります。

オンボーディングは「職場に慣れる」「人間関係の構築」「期待されている役割や成果を理解する」という3つのステップを順にクリアする中で中途社員を戦力化していきます。

各ステップの要所要所には面談の機会を設け、本人と周囲の認識にズレが生じていないかを確認しながら職場環境に慣れていきます。

e-Learningによる研修 

中途社員向けの研修に用いる場合でもe-Learningは効果を発揮します。e-Learningは1日の進捗が可視化されやすく、受講者も自分のペースで研修を進めることができる点から、教育担当と受講者の双方にメリットがあります。

ただし、e-Learningは業務知識やスキルを身につけるのには効果的ですが、社内環境に適応するためには別途で研修を実施する必要がある点を押さえておく必要があります。

OJTによる研修

新入社員研修の手法として一般的な研修の一つであるOJTは、中途採用向けの研修としても効果的です。

実務のスキルは備えているとしても、仕事の進め方や報告・連絡・相談の方法など、企業ごとに異なる働き方や社内ルールに適応するためにも、先輩社員が働き方や企業文化について説明し、実際の業務を通して働き方に適応していきます。

中途採用の場合、先輩社員の教育担当を決めずに曖昧にしてしまう場合がありますが、しっかりと配属先の部署の教育担当を決めて相談しやすい環境を作っておくことがポイントです。

教育研修費用の期間や相場は?

知識やスキルは研修で学ぶことができても、実際に仕事ができるようになるためにはアウトプットするための研修も重要です。そこで、実際に取り入れられている2つの実務研修についてご紹介していきましょう。

中途入社の研修期間は?

中途入社の研修期間をどの程度にするかは議論が分かれており、市場に調査結果も出回っていません。そこで、新卒採用の研修期間の調査結果から望ましい研修期間を推測してみました。

一般財団法人 日本生涯学習総合研究所の調査によると「新入社員研修の期間」については1週間未満が16%、1〜2週間が21%、3〜4週間が18%、5週間〜3ヶ月が25%、その他が17%と企業によってバラバラであるといえます。

中途入社の場合はもっと期間が短くなると予想されますが、中途採用は新卒採用の半分の期間を研修期間と定めていると推測しても大半の企業が2週間〜1ヶ月程度は研修期間を設けていることになります。

明確に中途入社向けの研修期間を設けるのであれば、まずはこの数値を基準にしても良いでしょう。

参考URL:一般財団法人 日本生涯学習総合研究所「「企業における人材育成」に関する実態調査」

中途採用向けの研修費用は?

研修をする上で予算を投入することは必然ですが、どの程度の予算を投入するべきかの判断は企業によって異なります。そこで、一つの基準として教育研修費用の実態調査のデータを参考に、中途採用の研修費用を算出しました。

株式会社産労総合研究所の「教育研修費用の実態調査」によると企業が社員1人当たりに投じている研修費用は平均で34,607円です。社員数299人以下の企業に限ると 38,250円です。

入社後の研修には相応のコストがかかるので、この2倍の金額を想定すると1人あたりの研修費用は約8万円程度がかかると見込んでおくと良いでしょう。

参考URL:株式会社産労総合研究所「2019年度(第43回) 教育研修費用の実態調査」

「中途社員は即戦力」の認識を改め、中途採用のエンジニアが社内で活躍できる環境を用意する

中途採用の社員は基本的なビジネスマナーや業務に必要なスキルは持っていますが、配属される組織に対しての知識や経験があるわけではありません。

よく「中途社員は即戦力だ」といわれますが、どれだけ優秀でも配属された環境にマッチしなければ活躍することはできません。中途採用を実施した場合は、職場環境に適応できるようにしっかりと研修を行い、人事・教育担当だけでなく職場全体で育て上げていく意識を持つと良いでしょう。