「これからは、中途採用だけでなく新入社員の採用も行うことになった」

「エンジニアの新入社員には、特別な教育をした方が良いのだろうか」

「効率的に新入社員を一人前にできる教育方法を探している」

中途採用を中心に人材採用を行なってきた企業では「社員を教育する」という概念は希薄になりがちです。しかし、新卒採用によってエンジニアを採用した場合には採用と教育をセットで考える必要があります。

この記事では、 エンジニアの新入社員教育に焦点を当て、 新入社員が効率的に一人前のエンジニアに成長するための教育方法についてご紹介していきます。

新入社員教育の概要と意義

ベンチャー企業やスタートアップは、その多くが即戦力となる中途採用での雇用を行なっていますが、将来を見据えて新卒採用に取り組む企業も存在しています。まずは、新卒採用の概要と、エンジニアとして入社した新入社員を教育する意義についてご紹介していきましょう。

新入社員教育とは?

新入社員教育は新規学卒者が各種学校を卒業し、企業に入社した4月から一定の期間をかけて行われる教育です。

新卒者の一括採用は終身雇用を前提とした雇用で、日本独特の労働文化です。

入社時はすぐに企業で活躍できるスキルを持たないため、企業の投資によって人材を育てていき、長期間雇用することで教育コストを回収していきます。

入社時期が決まっていることから、中途社員の入社時と比べて多くの人数を効率的に教育できることや、人員計画が立てやすいことから、多くの企業では積極的に新卒採用を取り入れています。

一般的な新入社員教育の内容は、 基礎的なビジネスマナーや業界で必要な知識を学んでから、実際の職場で働きながら学ぶ 「OJT(On-The-Job Training=職場内訓練)」 を行うのが一般的です。

しかし、新入社員として入社したエンジニアには、それ以外にも専門知識を習得するための特別な教育が必要です。

エンジニアの新入社員を教育する必要性

エンジニアとして活躍するためには、ビジネススキルだけでなくプログラミング言語などの特別なスキルが必要です。しかし、エンジニアとして入社した全ての新入社員が業務に必要なプログラミング言語を習得しているとは限りません

近年はエンジニア不足から、文系学部出身の学生をエンジニアとして採用している場合もあり、このような場合は新入社員教育を行わないと業務を任せることはできません。

また、理系学部出身で学生時代にプログラミング言語習得していたとしても、 独学で学んでいる場合には企業が求めるスキルを持っているとは限らないため、企業として求める業務知識やスキル学んでもらうことが重要です。

従って、新入社員を雇用した場合にはしっかりと新入社員教育を行うことは必須であるといえるでしょう。

エンジニアを育成するにはどんな教育研修がある?

エンジニアを養成するための教育研修にはどんな種類があるでしょうか。まずは多くの企業で行われている研修方法をご紹介していきます。

集合研修による知識やスキルの習得

新入社員のエンジニアを教育するために最もポピュラーな方法が専門の講師を招いた集合研修です。

集合研修では、まず最初にプログラミング言語やシステムなど、研修内容の基礎論理やビジネス上の意義などをご紹介し、基礎的な技術から徐々にレベルアップして行きます。

研修の後半では実際にプログラミングを組んでみる。開発を行うなどの実践形式の研修を通して実務に対応できるスキルを身につけます。

集合研修は個人研修と違い、近くに仲間がいるので分からないことは仲間同士で教えあったり講師から指導を受けることでコミュニケーションが促進されます。

スキルや知識と同時にコミュニケーション能力の向上も期待できることや、企業のニーズに合わせてカリキュラムのカスタマイズができることから多くの企業で導入されています。

通学形式の研修

プログラミング講座やエンジニア養成カリキュラムを提供しているスクールや専門学校に通学させてスキルや知識を教育する研修もあります。

学校に通い、専門の講師が教育を提供するので、送り出す企業の側から見れば手離れが良いというメリットはありますが、費用が高いことやカリキュラムを自社の事業に合わせて変更することができません

場合によっては、通学形式の研修後に自社の業務に適応するための研修が必要になる可能性もあるので、注意が必要です。

OJTによる新入社員研修

OJTによって新入社員研修を行う方法は、中小企業やスタートアップ企業で多く採用されています。すぐに実務に取り掛かるため、比較的早期に新入社員を戦力化できる研修方法と考えられていますが、新入社員の能力によっては業務にすぐに対応できない場合があります。

指導者の力量によって新入社員の成長スピードにバラつきが出るため、属人性の高い教育方法です。場合によっては、教育やマネジメントの適性がない優秀なエンジニアが教育業務にリソースを割かれ、 却って全体のプロジェクトの進捗が遅れてしまう可能性があります。

e-Learningによる研修 

動画やビデオチャット、ASPサービスを使ったe-Learningによる研修も増えてきました。e-Learningのメリットは時間や場所の制約を受けずに一定のクオリティの研修が受けられることです。

新入社員の数が少ない場合や地方都市に拠点がある場合など、講師を招いた集合研修の導入が難しい場合に利用されます。

サービスによっては、ビデオチャットでマンツーマンの教育を受けられることから、効率的に専門知識を学ぶことができるサービスであるといえますが、ヒューマンスキルの向上や社内とのコミュニケーション促進という点では他の研修に比べて見劣りする場合があります。

書籍を活用した研修

プログラミング言語の入門書などを利用して、新入社員研修を行うケースもあります。入門書にはプログラミングの例題や練習問題があるので、これらを解きながら業務に必要なスキルや知識を身につけていきます。

多くの入門書は丁寧に知識やスキルが身につくように書かれていますが、入門書を使った研修だけでは社会人としての基本やビジネスマナー、同期や先輩社員とのコミュニケーションといった新入社員のうちに学ぶべき素養を身につけることはできません。

書籍を活用した研修は、集合研修などと組み合わせて利用するのが良いでしょう。

どんな実務研修がある?

知識やスキルは研修で学ぶことができても、実際に仕事ができるようになるためにはアウトプットするための研修も重要です。そこで、実際に取り入れられている2つの実務研修についてご紹介していきましょう。

OJTにより実際の業務に関わる

OJTによって新入社員が実務の一端を担うのは最も基本的な実務研修です。OJTは先にご紹介した通り、インプットとアウトプットの両方を経験できる効果的な研修方法として知られています。上司や先輩社員によるフォローの元でプロセスごとや部署ごとに実務を経験していきます。

ジョブローテーション型のOJTによって社内の主要な部署の業務を一通り経験してから現場に配属できれば仕事の全体像が把握でき、他部署の社員との人間関係が構築できる状態で業務に就けるので効果的です。しかし、社内の各部署の業務負荷が増加するため、実施にあたっては上層部や社内の理解・協力が不可欠です。

実際にシステムやアプリを開発してみる

実際に使えるシステムやアプリを開発することは、実践的な経験を積むために効果的です。

担当業務によりますが、要件定義から業務分析、基本設計、工程管理や開発、テスト、運用や保守、障害対応など一連の業務を経験することで実務能力を鍛えます

研修で開発されるシステムやアプリとしては「ToDo」「ゲーム」「在庫(注文)管理」などが挙げられます。

効果的に新入社員のエンジニア教育するためには、適切な「インプット」と「アウトプット」を

「習うより慣れろ」という言葉がありますが、エンジニアは基礎知識が無いと業務に取り掛かることすらできません。従って新入社員のエンジニアを効果的に教育するためには、研修による知識やスキルのインプットと、実務を経験する「アウトプット」を交互に行うことがポイントです。

当然、インプットの質によってアウトプットの質は変化します。適切なインプットを行うためにも、社内で教育に投入可能なリソースを検討し、質の高い研修の導入や外部講師への委託など様々な観点から教育について検討すると良いでしょう。次回は未経験中途入社の育成についてお話しして行きます。